平成27年度 学生選書ワークショップを開催しました。
首都大に所属する学生さんに、首都大の図書館本館に置く本を選んでもらおうというコンセプトで始まりました図書館本館学生選書ツアー。
毎回個性的な選書内容で、参加者にも利用者にも好評なこの企画は、今年でめでたく5年目を迎えることとなりました。
そこで今回は趣向も新たに「学生選書ワークショップ」を開催しました。
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◆「選書ツアー」と「選書ワークショップ」の違いって?
参加者が「首都大生に薦めたい本を選ぶ」という視点はそのままに、選書から展示までの作業を通じて、その本と自分の関わりを考え、人へ伝える。それが図書館本館が考える『学生選書ワークショップ』です。
これまでは参加者全員で同じ日に書店へ向かい、みんなで一斉に選書をしていました(だから「ツアー」)が、参加したくてもその日は用事があって参加できない、という学生さんからの意見もありました。そこで、今回は期間中、好きな時間帯に書店へ行って本を選べるより自由なスケジュールに変更してみました。
今回は自分の思い入れのある1冊を起点として、そこから連想される様々なテーマに則った本を選んでもらいました。
ワークショップ当日は、選んだテーマをマインドマップ(※)のように図にしたブックマップを作成して参加者同士で紹介しあい、最後に館内の展示棚に自分の本棚を作りました。
※マインドマップとは?
思考地図。
頭の中で起こっていることを見えるように描くことで、
脳の可能性を引き出し、問題解決やプランニングなどに役立てる。
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◆事前説明会
お気に入りの1冊とその理由について参加者一人ひとりからお話を聞かせてもらいました。
思い入れのある本ということもあり、皆さんの話す様子の楽しそうなこと。
話しながら、お気に入り本から派生する言葉やイメージを付箋に書き出しワークシートに貼っていってもらいました。
話す度にテーマが浮かぶのか、付箋の数はどんどん増えていきます。
最後に付箋をテーマ別に大まかにグループ分けしてもらい、それを元にそれぞれ書店で選書してもらうようお願いをして、事前説明会は終了しました。
◆選書 (11/12(木)~11/14(土) MARUZEN多摩センター店)
◆ワークショップ (12/4(土)10:00-13:00 図書館本館1Fプレゼンテーションルーム)
皆さんが選んでくれた本も無事納品され、登録が完了したところで、ワークショップの開催です。
参加者の学部生5名と、システムデザイン研究科及び学術情報基盤センターご所属の藤吉先生も参加してくださいました。
ここで初めて全員が顔合わせ。
少々緊張した面持ちでスタートしましたが、きれいにブッカーが掛けられた自分が選んだ本や、他の人が選んだ本を見ながら、自然と和気藹々とした場になっていきました。
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第1部:ブックマップ作成
さて、ワークショップの本題のひとつ、ブックマップ作成です。
これが、実は今回の一番の目玉。
真ん中に『私のお気に入りの1冊』のカバー画像が印刷されたA4用紙を前に、自由に線を伸ばし、今回選んだ本をどんどんテーマと共に繋げていきます。
ところがこれが中々難しい。
どんな風に自分の考えたテーマ同士の関連性を表現するか、皆さん色画用紙やマジックを手に試行錯誤を繰り返し。一生懸命手を動かしながら、さまざまな話題で盛り上がり、マップが出来上がる頃にはすっかり打ち解けていました。
第2部:座談会
続いて、自分が選んだ本のテーマや選んだ背景についてそれぞれ話してもらいました。
実際に自分が選んだ本を手にとって話す皆さんの顔の楽しそうなこと。
話を聞いている周りの参加者の皆さんも時折質問を挟んだり、感心したり。
まったく違う本を選んだにも関わらず、互いに関心のあることが共通することにも驚き、おススメ本を教えあう一コマも。
学生さんの興味のあることや大学生としての過ごし方などがリアルに聞けて、職員にとっても非常に興味深い座談会となりました。
●●● ここで 座談会の様子をご紹介 ●●●
【参加者の皆さん】
土屋さん(地理環境コース 学部3年)
佐藤さん(国際文化コース 日本文化論 学部4年)
山根さん(分子応用化学コース 学部4年)
富重さん(法律学コース 学部2年)
清水さん(インダストリアルアートコース 学部2年)
司書)これまで、皆さんが選んだ本から派生するブックマップを作っていただいたところですが、どんなテーマが広がってどんな本につながっていくか、いろいろお話を聞かせてください。
土屋)僕は、アメリカの元副大統領アル・ゴアが書いた『不都合な真実』から派生して、地球温暖化問題と、自然環境、そして災害にどう備えていくか、ということで選んできました。
地球環境への対策を考える上で、まず『温暖化の世界地図』というのがあります。僕、専攻が地理環境なんで地図とか見るのが好きなんですが、これは図化されているのが見やすいです。
それから、自然環境の中で僕が恋焦がれているのが極地なんですが(笑)。宇宙とかにはあまり関心がないんですけど、非日常の環境に憧れがあって、いつか南極とかアマゾンに行ってみたいと思ってます。こういった場所に行ってきた先輩たちが書いた本として『すてきな地球の果て』とか『サハラに死す』を。
それから今回、僕が本を選んできた中で一番伝えたいのは、こういう厳しい環境の土地や災害時にどう生き抜いていくか、ということですね。みんなに知ってほしくてサバイバル系の本も選んでみました。実は、この夏2ヶ月くらいシベリアの山の中でロシア人と過ごす機会があったんです。斧の使い方や火の起こし方を教わったりして。僕は山岳部なんで、もともとそういうの好きなんですけど、やっぱり自然の中でそういうことができる人はかっこいいなとすごく感じましたね。
司書)いつかはそういうところに住みたいという願望があるんですか?
土屋)そうですね。出身は都市近郊の住宅街なんですけど(笑)、都市型生活から出たいという願望はあります。
サバイバルの楽しみって、なんでも自分で考えて行動するところだと思うんですよ。物資が何もないところで、あるものでどうにかやりくりしなきゃいけないっていう楽しみを知ってもらいたい。全部無い状況だったら、自分の体と頭を使うってことですね。以前リトアニアに留学していたときに、農村を訪れてその土地の人たちの知恵をいろいろ聞く機会があったんですが、いや~自分は甘いなと思いましたね。
佐藤)『グレートジャーニー』っていうドキュメンタリーがありましたね。関野吉晴という冒険家が、人類がアフリカで誕生して世界各地に移動した道筋を人力でたどるんです。犬ぞりとか電気を使わない交通手段で、アフリカの人類発祥の地から祖先の足取りをたどるという言う内容でした。
土屋)おお~チェックしなくては。
佐藤)最近映画になってましたね。まず斧を作るために、九十九里浜で磁石を使って砂鉄を集めて、自分で作った炭を使ってたたら製鉄で斧を作って、インドネシアまで行ってその斧を使って木を倒して、船を作って石垣島まで移動するんです。
富重)すごい!いかに資本主義が恵まれているかですね(笑)
佐藤)関野吉晴は、日本に暮らしていると周りには自分で一から作ったものはないと思って、そこで自分で一から作ったものだけで旅をすることはできるのかを実証したんですね。この関連本をすごく選びたかったんですけど、絶版になってしまっていて残念でした。
土屋)結構好きですね(笑)。
佐藤)好きなんですよ(笑)。
土屋さんの選書リストはこちら (Adobe PDF221KB)
土屋さんのブックマップはこちら (Adobe PDF736KB)
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このような形で座談会はまだまだ続きます。 続きは→こちらからどうぞ!
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第3部:展示
最後に、本の展示です。
色とりどりに描かれたマップを手に、図書館本館貸出カウンターの前にある展示棚に、思い思いに本を展示してもらいます。
本同士の関連性を意識して、特に見せたい本は表紙が見えるように面出しをし、POPも付けて...
きれいにラミネートしたテーママップをその上に貼り付けて、完成です!
自分が飾った棚の前で記念撮影をして、自分の携帯でも写真を撮ったり、展示した本をすぐに借りていったり。
どんな人が手に取ってくれるか、来館者が興味を持ってくれるかちょっぴり気がかりな様子で解散となりました。
もちろん、その後の貸出状況は上々ですよ。 皆さん本当にお疲れ様でした~~
◆最後に
今回、初の試みとなった複数日による選書と、ワークショップ。
作業を通じて、自分が別々に関心を持っている事柄が、実は繋がりを持っていることに気がついた、という参加者の言葉が印象的でした。
次回に向け見直すところはありますが、参加してくれた学生の皆さんが、今回もとても楽しそうな顔だったのが印象的でした。
本好きな人が、本をきっかけとして交流できるこんな素敵な企画は、図書館ならではのものと思っています。
これからも引き続き開催していきますので、まだ参加されたことのない皆さんも、是非、参加してみてください。
今回参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました!
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●●● 参加者の感想 ●●●
・ 本好きにとって、自らが選んだ本を図書館に展示し、他の利用者の人たちに読んでいただけるような機会自体、本当にありがたく、楽しいイベントでした。今回のワークショップでは、自分の好きな本を核に本を選ぶという企画で、他の参加者の人たちがどんな本を読み、どんな風に本を選ぶのか、本の読み方が違えば、本の選び方も全然違う、ということを感じさせられ、興味深かったです。
ワークシートを作成する中で、本は単一のテーマを持っているわけではなく、さまざまなテーマが水脈のように分岐していて、一つの本を出発点に、多くの本を関係付けることができる、ということに気づかされました。 (中略) 自分とは何か、について思い悩んでいたり、人生について考え、苦悩している人に手にとってもらえたらいいな、と思い選びました。最近、図書館の自分の棚を見て、選んだ本がかなり借りられていて、嬉しいです。
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・事前のワークショップでは、自分のアイデアや選書基準を大まかに洗い出すことが出来、とても充実していました。(中略) 選書は期間内に自由に行え、これは良かったです。他の参加者と書店を訪れると、やはり時間などを気にしてしまいがちです。今回は自分のペースで店内を巡れたので、とても過ごしやすかったです。土曜日の座談会も、初対面ながら深いことまで議論できました。工作用具も十分に揃っていました。