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H27年度 学生選書ワークショップ 座談会

◆H27年度 学生選書ワークショップ 座談会

【参加者の皆さん】

 土屋さん(地理環境コース 学部3年)

 佐藤さん(際文化コース 日本文化論 学部4年)

 山根さん(分子応用化学コース 学部4年)

 富重さん(法律学コース 学部2年)

 清水さん(インダストリアルアートコース 学部2年)

 


>>座談会続きです

佐藤)ではこのまま僕が引き継いで。僕が選んだ1冊は、『ムーン・パレスという小説です。最初の文章からすごいので紹介しますね(冒頭を読み上げる)。主人公がアパートを追い出されてホームレス状態になった後に、盲目のおじいさんの身の回りのお世話をするアルバイトをすることで自分の人生を考えていくというストーリーです。またそのお世話をするおじいさんの人生も壮絶で、アメリカの荒野に閉じ込められて絵を描きながら生活する、ということをしてきた人なんです。で、このおじいさんとの出会いを通して、旅や人々との出会い、生きるとはどういうことかなどを主人公は考えるわけです。

テーマっていうテーマがある本じゃないんで、その本そのもののテーマで選ぶっていうことはできなかったんですけど、登場人物の特徴なんかから連想して、人々」、「考える」、「生きる」、「という4つの方向に広がるように本を選んで、そのテーマの合間にも本を配置するようにしてブックマップを作ってみました。

 土屋さんが紹介したのは辺境の地でのサバイバルでしたが(笑)、坂口恭平さんの『都市型狩猟生活』は都市でいかにお金や場所に縛られずに自由に暮らすかという本で面白いです。あと、『世界の使い方』っていう本は、パックパッカーのバイブルのような本です。僕自身バックパッカーで世界を放浪したことがあったので選びました。

 それから、主人公が盲目のおじいさんをお世話する中で、すごい印象的なセリフがあったんですが、まさにそれにぴったりの本がこれです。『目の見えない人は世界をどう見ているのか』。目の見えない人は、肉眼で見えてるわけではないですが、音や皮膚の感覚で360度を感じることができるという内容です。作品の中で言っていることとこの新書で述べられていることがちょうど合致していて面白かったです。

 あとは、ぜひ本棚自体を見てください。

司書)アメリカ文学を沢山選んでくださったんですね。

佐藤)専攻は日本文学なのですが、今回はアメリカ文学ばかりです(笑)。

司書)日本の文学とアメリカ文学ってどんなところに違いを感じますか?

佐藤)日本の純文学って、特に私小説は自分を破滅に追い込んで書く、破滅する自分について書くっていう感じがあるんですが、アメリカ文学って純粋なフィクションが多くて、そういったところに魅力を感じますね。最近の日本文学はその辺にあまり違いはないような気がしますが。

司書)アメリカって国土が広大だから、旅が身近なのかなって気はしますよね。

佐藤)確かに、旅しやすいって思いますね。日本の作家にとっての放浪って、酒飲んで破滅していくまでの道のりとしての旅が多いですが、アメリカの作家にとって、放浪とは荒野を目指したり規模が違うなって感じます。大地の感覚が文学に反映されるというか。

司書)1日に車で何時間も移動してそれを何日も続けても、まだ道が続いている。そういうロードムービーもたくさんありますよね。佐藤さんが選んでくださった本を見て、そういう空気感や旅に関する感覚の違いが文学に反映されるのかなと思いました。

 

佐藤さんの選書リストはこちら (Adobe PDF232KB)

佐藤さんのブックマップはこちら (Adobe PDF816KB)


山根)僕がまず選んだ1冊は『人を伸ばす力』です。実は全部読み通しているわけじゃないんですけど、読むたびに自分の行動が変わったのを実感した本です。この本を読んだ大学3年までは、月に本を1冊も読まない生活だったんですけど、今は10冊から20冊読むようになりました。内発的自発と外発的自発について書かれているんですが、いかに自分なりのモチベーションを持つかということについて考えさせられました。

 僕の専攻は分子応用化学なんですけど、新しい分野に目を向けるようになって大学院に進むきっかけをくれた本です。

土屋)シェールガスとか石油とか、エネルギー関連の本も選んでるんですね。

山根)良い小説はきっと皆さんが選んでくれているだろうと思って(笑)、僕の進路を絡めた選書をしてみました。

 この本から派生したテーマとして、まず「教育」について。教育の現場っていうことを意識して選んでみました。モンスターペアレントという人たちはなんでそんなに攻撃的なのか、そういう人たちの心理が知りたいなと思って『なぜあの保護者は土下座させたいのか』。逆に教える側はいろんな生徒や親にどう相対しているのか、という面から『策略-ブラック学級づくり』。あと教室の中でなにが起こっているのかを『教室内 (スクール) カースト』で。声を大きくしてまくしたてる者に積極的に従う層と、無関心な層、逆らえない層と、なぜ心理的に差が生まれるのか、学校を取り巻く人々がそれぞれ何を思っているのかを理解する本を「Education」というテーマとして選びました。あとは修士・博士を目指す人向けに、『すべて僕に任せてください』。教授をはじめとする、職業としての学問がいかに辛いいばらの道か、っていうのがわかります。僕もいくつか読んだんですが、正直コワイなと(笑)。

 それから、本のテーマとは直接関係はないんですが、『人を伸ばす力』という本をきっかけに僕自身がエネルギーを専門分野に選んだというつながりで、「エネルギー」をテーマにいくつか選びました。

 例えば、石油やシェールガスのようなエネルギーって需要とのバランスがあるので、結局人間の心理が働く分野なんですね。石油の取り合い合戦とか、これからは食料とか。

司書)エネルギーや資源には国同士のパワーバランスを変えるような力がありますよね。

山根)そう、そういうこと考えると、結局戦争は無くなりようがないのかなとか、日本の持つ力って実際世界ではどのくらいなんだろうとか考えちゃいますね。20年後に日本は存在するのかな、とか。僕はまだ知識が少なくて論じるまでにはいかないので、石油とかシェールガス、メタンハイドレードとか水のようなエネルギーの財源を見て、日本はどれくらい力あるのか比較検証できるような本を選んだつもりです。

 あとは自分の研究を紹介したいという気持ちで、膜分離に関する本も加えてみました。例えば、綺麗な水を安定供給するのってすごくお金がかかるんですけど、膜に水だけ通して細菌類をシャットアウトする技術があるんです。ちょっとキタない話ですが、トイレの水さえも再利用して飲める水にする事が可能で、理論的には日本の水道水より綺麗なんですよ(笑)。この方法は水の浄化としては劇的に安上がりなんですが、水不足に悩む国の人たちにもちょっとまだ心理的に反対があるらしいです(笑)。

清水)宇宙船には欠かせない技術ですよね。

司書)それが普及したら、発展途上国の水汲みの仕事がなくなりますね。

山根)確実になくなりますね。今の浄水の技術は、主に凝集剤入れて沈降させてその上澄みを取り出しているだけなので、ウィルスは取り除けてない状態なんです。でも膜を通すと細菌も全部取り除くことができる。そうなってくると、水の取り合いのパワーバランスも変わってくるんじゃないかなと。

司書)山根さんのブックマップは、本が真ん中じゃなくてこの辺(右上)に配置した方が作りやすかったかもですね。(註:ブックマップは、中心となる本を真ん中に配置した用紙を司書が用意していました)

山根)そうですね(笑)。広がったテーマからさらに枝分かれしているので。

司書)そういう図ができる可能性があったな、と山根さんのお話を聞いて思いました。今回の反省点として今後の参考にさせてもらいます(笑)。

山根)僕はもともと生物系志望で農学とかに興味があって、肉食っててもどこから来たんだろうとか気になって。それを具現化した本が『ぶたにく』ですね。表紙は可愛いんですけど(笑)。これを見て、食肉として届くまでにどれくらい水や資源を使ってるんだろうとか想像しながら読んでいくと面白いです。豚肉100gを調理した料理を食べるのに、水や石油をどれぐらい使ったんだろうという視点を、見てくれた人に与えられればいいかなと思って。

清水)そんなこと考えたこともなかった・・・

司書)エネルギー関連の本の隣に豚ちゃんの本が置かれて、そこを繋いでくれるのが今の山根さんのお話ですね。

山根)計算式やってればいいってほど、エネルギーって単純じゃないなと思って。

土屋)『プロメテウスの罠』ってどんな本ですか?話には聞くんですけど。

山根)この本は、福島原発事故を取り上げたルポですね。2011年の終わり頃から朝日新聞で連載が始まって、今も続いています。

 事故当時、政府発表では直ちに影響はありません、とか言ってたじゃないですか。新聞も、国会に出る話を鵜呑みにしたような論調ばかりで。現地の人や一般的な市民は疑ってはいるんだけど他に情報がなかった。そんな時期に、普通の人は立ち入れないエリアやそこにいる人に取材をして書かれたのがプロメテウスです。

 これまでの報道では、新聞社として書きたいことと読者が知りたいと思うことが完全に乖離していた。事故が起こって半年以上経つのに未だそんな状況だったところを、打開したのがこのルポです。

土屋)へぇ。

山根)こういう本だから、もっと読みもの的な分類の棚にあるのかと思っていたんですけど、電気とか電子の棚にあって驚きました。専門外の人はなかなかこの棚まで来てこの本を手に取らないだろうと思いますが。(註:図書館分類では電気工学として請求記号「543.5原子力発電」の棚に配置しています。)

佐藤)確かに。どちらかというと僕らは、原発問題に挑むジャーナリズムという観点で興味を持って読みますね。

司書)なるほど、そうですね。じゃあ、1巻から山根さんの棚に並べておきましょうか。広く手に取ってもらういい機会ですね。

山根さんの選書リストはこちら (Adobe PDF300KB)

山根さんのブックマップはこちら (Adobe PDF619KB)


富重)生きるか死ぬかの話や、日本の先行きを現実的に案じる話が出たところで、僕は非常にSF的な視点です(笑)。伊藤計劃という人の『ハーモニー』を1冊に選びました。監視社会を舞台にした本なんですが、最近映画にもなって今駅前で上映されてます。この本を起点に、日本が文明国として発展している中で、今日本で何が起きているのかにフォーカスして選んでみました。今から日本が向かっていく先は希望の社会があるのか、もしくはSFが描くような絶望の社会しかないのか。多分どっちにもならないと僕は思うんですけど、方向としてどっちにも向かって行っているという感覚は、人それぞれあると思うんです。そんな中から4つテーマを立ててみました。

 一つ目のテーマは、日本の希望の方向性としての「クールジャパン」を挙げてみました。先ほどエネルギー面で日本の立ち位置を示唆する話が出ましたが、僕は文化的な面で一番可能性があるのはクールジャパンかな、と思っています。アニメコンテンツとか、エコツーリズムとか日本の伝統とか、クールジャパンの中にも色々なジャンルがあると思うんですが、それを俯瞰してみたときに、コンテンツ産業としてまとめることができるんじゃないかなと思います。そこで、僕自身の専門が法律なので、日本のポップカルチャーを支えている著作権の入門的な『出版・マンガビジネスの著作権』『映画・ゲームビジネスの著作権』を選んでみました。一方で、アメリカの弁護士が書いた『なぜ、日本の知財は儲からない』によると、めちゃくちゃ儲かるアメリカに比べて、日本の知財はまったく儲からない構造になっているらしいんですね。個人的には国のやり方が下手なんじゃないかって思いますが。政府や経済界が「なんだ、マンガか」って本腰を入れずにリジェクトしている。そんな状況を今後のためにもまずは止めていくべきなんじゃないかと思っています。

 もう一つは「孤独」というテーマで選んでみました。現代って、日本のみならず全世界的にも孤独になる要素がないんじゃないかと思うんです。SNSで人と出会ったり、我々が今属している大学というコミュニティでもこういったイベントがあったり、普通にスーパーに行って知り合いに会ったり家族がいたり。でも実は、世の中に孤独を感じている人はめちゃくちゃ多いらしい。それが引き起こした象徴的な事件が、秋葉原の殺傷事件だったのかな、と思います。『解』『解+』は獄中で犯人が書いた手記なんですが、こういった事件を引き起こした背景に本人が孤独を挙げている本として、取り上げてみました。

 あとは、個々の事件を各論的に見るだけでなく、犯罪や犯罪者を俯瞰できるものはないかな、ということで刑務所について書かれた本もあげてみました。実はこれ、僕の愛読書でして(笑)。刑務所の中で何が支給されているのか、運動は1週間に何回か、入浴は何回か、などが細かく書いてあるのがすごく興味深いです。これを読んでいると刑務所って待遇悪くないように思えてくる。少なくとも僕の高校の寮よりはずっといいかなと(笑)。温かいご飯も出るし。

清水)わざと犯罪を犯しても刑務所に入りたいという人がいるという話は聞きますよね。

富重)そう、頼る人がいなくて生活に不安を抱えている人や高齢者の中には、刑務所に入ったほうがいい生活ができるという人もいる。それが今の日本です。そういう状況がいいのか悪いのかについてぜひ考えてみてほしい。孤独が引き起こす様々なことについて思いを巡らせてほしくて選んでみました。

 あと二つのテーマは、ちょっとSF的なんですが、一つ目は「ディストピア」について。ディストピアとは、ユートピア(理想郷)の対義語でまだSFの中でしか起きようのない話なんですが、今の日本が向かっていく未来について悲劇的な予測を突き詰めていくと、これらのSF小説のようになっていくんだと思います。そうなっていったらどうなるのかなということを、小説を読みながら考えてほしくて選びました。

 そして最後のテーマは「監視」。皆さんも少なかれ監視社会を実感したことがあるんじゃないかと思います。学内でもパソコン室なんかには監視カメラがありますよね。もちろん、それが即監視社会というわけではないんですが、その画像データを誰かが意図的に悪用してプライバシーを犯す可能性もあるんじゃないかな、ということで『監視社会』や『監視カメラとプライバシー』って本を選びました。

 先程SNSを使っている中でも孤独を感じるって話が出たんですけど、実はSNSを運営したり企業として利用したりている側にとっては、ものすごく安く個人情報が手に入るツールとなっている。ビッグデータですよね。この『ドラグネット監視網社会』の宣伝文句には個人情報が30円で売買されているってありますが、実際に僕がフェイスブックやツイッターをやってても、ある程度個人情報が流出しちゃっているのを実感する事があります。学校や家族のこと、今日どこへ行ったっていうことが全部わかれば、その人のある程度のことは予測可能になっていく。僕はアマゾンのおススメによってよく本を買うんですが、最近はホントに趣味と合ってきたんですよ。ということは、アマゾンは僕よりも僕の本の好みを知っている、ということなのかな、と思って。そういったことが企業側に知られているっていうことは、今のところ僕にとっては便利なんですけど、それを悪用される可能性はないわけではないですよね。

 法律で最初の頃に学ぶことにパノプティコンというのがあって、高い塔を中心にその周りに囚人を配置して、上から見ているかどうかはマジックミラーのようにわからないんですけど、見られているかもしれないという意識が働いて皆が規律正しい生活をするという話があります。僕らも精神的に、そんな状態に置かれつつあるんじゃないかなと思います。

 で最後に、今ホットな話題のマイナンバーについて書かれたものとして『未来を拓くマイナンバー』を選んでみました。これまでの文脈でマイナンバーの話を出すと、ものすごい悪いものであるという話に導こうとしているように感じるかも知れないんですが(笑)。

(うんうん、と一同深くうなずく)

土屋)今の話からだとマイナスの印象しかないなぁ(笑)。

富重)実は僕は全然悪いものだとは思っていなくて、どちらかというとポジティブなものだと思ってるんですよ。逆に言えば、マイナンバーはそんなに万能なものじゃないんです。行政は元々住民の個人情報は取りまとめている訳で。ただマイナンバー制度によって、自分の個人情報がデータとしてあるっていうことを皆が急激に意識しだしたような気はします。でこの先、国のサーバを乗っ取って悪用する人ような人がでてくるかもしれないという可能性はある。悪用の結果、ディストピアにつながる様な流れになっていくのか、便利に使ってよりよい世の中になっていくのか、ですね。

 今回紹介した本を読み通していく中で、日本の将来が希望に向かっていくのか絶望に向かっていくのか考えてもらえればと思います。

司書)選んでくださったディストピアを扱った小説で共通しているのは、「すべての人間が幸せになる社会のため」という管理側の前提がありますね。犯罪が起きる前に、罪を犯しそうな人を捕縛しちゃうとか。

土屋)実際に昔の刑法では、生まれながらにして犯罪人になる遺伝子があることを予測する「生来的犯罪人説」っていう考え方がありましたからね。犯罪傾向にある人が完全にわかるようになった社会を描いた『PSYCHO-PASS サイコパス』というアニメーションもあるので、よかったらぜひ見てみてください。

司書)あと、「絶対にあなたたちは幸せでなければならないんですよ」という社会を描いたものもありますね。皆にとっての良い社会のためにガチガチされている息苦しさ。

富重)良いことだから皆で同じ方向を向きましょう、それが幸せなんだという考え方と、幸せかもしれないけど果たしてそれは人間として正しいあり方なのかっていう葛藤が描かれてますね。

 いっそのこと、極地に行って政府も監視もないワイルドライフっていうのはどう?

(一同爆笑)

土屋)うん、そうそう、今そう思った。

富重)規制も法律もなく、何でもありな世界。

土屋)(自分の選んだ本を指して)こういう人たちは、絶対的にそういう監視社会への抵抗感があって、極地を目指すんだと思うな。

富重)どちらも極論なので、完全にそうなっちゃう世界にはならないと思うんですけど(笑)。でもどちらかといえば、今は監視社会の方向に振れているのかな。

清水)さっき『ハーモニー』だったかな、ペラペラめくっていたら、「真綿で首を絞められるような」っていう文章があって、はっとしましたね。

司書)清水さんは去年選書ツアーに参加してくださったんですよね。そこで伊藤計劃さんの本を選んでくれてるんです。くしくも、今回富重さんとリンクしてますね。

清水)選んだ本はそれぞれの広がり方をしてるんですけどね。

司書)意外なところで嗜好がつながっている。本が他の人の世界とつないでくれる面白さがありますね。

富重さんの選書リストはこちら (Adobe PDF218KB)

富重さんのブックマップはこちら (Adobe PDF670KB)


清水)で、私の本棚ですが、SFから発生していく趣味が全開です(笑)。星新一を中心に、もともと好きだった本を集めてきたんですが、自分で別々に好きだと思っていたことがやっぱりつながっているんだというのが、今回改めて分かった感じです。

 ではまず「星新一」の世界から。SFに一番最初に触れたのが星新一の本なんですけど、世界観がすごく奇妙で。SFの未来っぽい世界観に、空飛ぶ車とか目の前に透明な画面がブーンと広がったりその辺にずっと広告が流れていたりするのが視覚的に面白いなぁっていうのがまずありました。その気持ちが、そのままアートへの関心につながっていった感じです。

アートや美術って難しく捉えられがちで、実際に美術館でも作品について詳しく説明するのが大好きな人を見かけるんですが(笑)、私は見た目でいいな、と感じたものが好きですね。そういった角度からアートやデザインが好きだな、と思ってます。

なので、本をジャケ買いすることも多いですね。『横尾忠則が招待するイッセイミヤケパリコレクション』や『Vectorism : ベクターイラストレーションtoday』もまず表紙がいいなと思って。それで中をめくってみるとやっぱり面白い、っていうものが今回も結構ありました。ぱっと刺激を受けた本としては『世界に衝撃を与えたグラフィックデザイン』。すごいインスピレーションの世界です。でも実際はすごく考えられて作られてるんですけど。こういうのを見てもらって、デザインってそんなに難しいものじゃないんだよ、ってことを伝えたいなと思ってます。

あとは、星新一から飛んで「ミステリー」をテーマに。ミステリーでは人が死んだり犯罪が起きたりしますが、そういう方面から刑法のほうにも興味が沸きますね。

司書)そういえば、NHKの星新一ショートショートが専攻を選んだきっかけって言ってましたよね。

清水)星新一のショートショートが昔NHKでアニメになってまして。星新一の世界観を視覚的に見て衝撃を受けて、映像を作りたいな、と思いました。

アートにも手で描くアナログ的な表現と、パソコンを使って映像などを作っていくデジタル的なものとがありますが、デジタル的な表現は数学や物理につながっていくんですね。SFには宇宙が多くでてくるので、「素粒子から宇宙」という教養科目をとってみたら、本当に小さな粒が集まって、想像のつかないほど広い宇宙を形成している。それを超ひも理論で説明できるのが面白いなと思いました。

あとは文字や数字の羅列だったものが、画像データに変わっていくのが面白いですね。今、インタラクションデザインっていって、プロジェクションマッピングがすごく盛り上がっていますよね。プログラミングをして映像を作って現実にあるものに投影していく、そういうものが面白いですね。

あとは、SFつながりで人工知能系にも興味があります。人工知能は人を越えられるのかとかという興味から、『人工知能に負けない脳』とか。

司書)アートって美大で学ぶような実技や理論もあれば、表象文化の研究対象となることもある。一方で清水さんのアートへの興味の持ち方はすごく理系的な視点ですね。

清水)もともと、算数と図工が一番好きだったんです(笑)。それぞれ全然別のものとして好きだと思っていたんですけど、成長していく過程でSFに出会って、すごく面白いと感じた世界観が数学的に理論建てて作られていたりすることに気づいて。数学が面白い世界につながっていくんだと思いました。そこで境目がなくなっていきましたね。

司書)ちょうどいいところにインダストリアルアートコースがあったんですか?(笑)

清水)そうですね(笑)。アートと理系ですごく進路を迷ってたんですが、日野キャンパスの学校説明会に行った時に、笠原教授の「アートとは数学である」って言葉を聴いてこの大学に入ろうって決めたんです。それくらい、数学からアートに向き合う感じが好きなんですよね。今、プログラミング基礎とかの授業も取ってるんですけど、すごく面白いです。

司書)子供の頃から好きだったことが重なった場に今いられるのって、すごく幸せですね。

富重)僕も小学生の頃からゲームとかデザインとが好きだったんですけど、アート的なセンスがそこまでないないのでそっち方面はあきらめたんですが(笑)。もうひとつ興味のあった法律の分野と合致した点がコンテンツ産業の知的財産だったんですよね。その分野を研究されている山神先生がいらっしゃったので、この大学を選んだんです。

(一同なるほど~)

山根)高校生の時にそこまで考えてたなんてすごいなあ。

司書)でも山根さんもその1冊に出会って、大学生活が大きく変わったんでしょ?

山根)皆さんの高3が僕の大3です(笑)。僕の場合は大学受験のときは何も考えずにコースの名前だけ見て決めちゃったんで、二人と違って入ってからギャップがありました。僕がそこまで考えたのは大学院を選ぶ時だったので、この本を読んだことで今やっとやりたいこと見つけたって思ってます。

清水さんの選書リストはこちら (Adobe PDF350KB)

清水さんのブックマップはこちら (Adobe PDF525KB)

 

以上、学生参加者5名による座談会でした。

 
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