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No. 18 福地 一(航空宇宙システム工学)

スペクトル解析外部リンク

著者:日野幹雄 出版社:朝倉書店 出版年:1977 ISBN:4254125119

先生からの一言

手元に日焼けも目立つこの本がある。

購入したのが1978年4月15日で、電波研究所に入所してちょうど1年、社会人1年目になる。当時、人工衛星からの電波が降雨を含む対流圏の大気によってその信号強度が変動するデータを手にしていて、その変動特性を解析しようとしていた時に、なにげなしに購入した記憶がある。300ページの大著であるが、実例やコンピュータプログラムも豊富でまんべんなくよみ通した。正直なところ、専門書でここまで読みつぶした本はなかった。

この本の初版は1977年10月で、翌年の2月には第2刷が出ている。筆者がもっているのはこの2刷である。2刷がこんなに早く出るということも好評だったのかもしれない。まだ、初版本に近かったので、プリントミスも多く、A4用紙で3枚にわたるコメントと印刷ミスを出版社に1979年5月に送ったところ、日野先生から、その8月に丁重な返事をいただいた。そのご返事の冒頭には、「・・夏休みに入りやっと筆をとることができました。・・・」とあり、大学の先生も忙しい職業なんだなと感じた。“涙なしのスペクトル解析”(Spectral Analysis without tear)を標榜していると序にも書かれているが、その目的は十分達成されていると感じた。特に、今では広く利用されているが、短時間時系列からスペクトラムを解析するMEM(Maximum Entropy Method)は、FORTRANプログラムも記載されている他、解析例も示されて興味深かった。このコードは、1986年に英国に滞在したときに、太陽活動サイクルと英国各地での降雨量の相関の解析に使わせてもらった。

信号解析の理論一辺倒ではなく、読者に手法、実例を示し、実践を可能とするツールを提供して読者の関心をひき、並行して理屈を理解させるというこの本の性格が、私をして読み通させしめたのではないだろうか。

掲載日:2011/08/03

 
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