先生のおすすめ図書

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No. 6 稲垣 博(インダストリアルアート)

ガウディの伝言外部リンク

著者:外尾悦郎 出版社:光文社 出版年:2006 ISBN:4334033644

先生からの一言

著者は1978年からスペイン・バルセロナ市のサグラダ・ファミリア「聖家族贖罪聖堂」の彫刻制作を担当しており、30年を経た今も制作中である。 1978年と言えばガウディがようやく日本にも知れ渡り始めた頃でもあり、私自身もこの時期に不思議なデザインに惹かれて初の海外旅行先として 行ったのがサグラダ・ファミリアであった。 日本では湿った暗い印象として伝えられていたが、実際に見ると地中海の風土を色濃く反映した、乾いた明るさを持った建築であったのに 驚いてしまったことを良く覚えている。

ガウディに関する書籍は多いが、建築の表面を隙間なく埋めている物語性をディテールから読み込める書籍としてお薦めしたい。

例えば「ロザリオの間」のくだり。

「誘惑」という副題がつけられたこの部屋には、劇場爆破テロに対しての「爆弾を持った若者」、 僅かな金銭の為に身を売らざるをえない少女、その貧困への悲しみに対して「祈る少女」、それぞれの彫刻がある。 これらはガウディが生存中に起きた2つの出来事に心を痛め制作したものであり、作者の心の透明さを伺わせるところでもある。

このように、ガウディは何をイメージしてサグラダ・ファミリアをつくろうとしたのか、 他書には書かれていないその優しさを感じとれる良書である。

掲載日:2010/10/22

 
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