No. 2 福地 一（航空宇宙システム工学）
Wave propagation and scattering in random media ; vol.1 : Single scattering and transport theory , vol.2 : Multiple scattering, turbulence, rough surfaces, and remote sensing外部リンク
著者：Akira Ishimaru 出版社：Academic Press 出版年：1978 ISBN：vol.1 : 0123747015 , vol.2 : 0123747023
先生からの一言
私が大学修士を修了して郵政省電波研究所（現在の（独）情報通信研究機構）に入所したのが１９７７年。そこで、日本初の国内実験用通信・放送衛星の実験従事し、大学時代には経験していない機器や用語に戸惑いながらも、自分で関心をもったのが電波の伝わり方だった。以来、電波研究所から今にいたるまで電波と媒質との相互作用の勉強で給料を30年以上もらってきている。
電波の伝わり方を勉強する中で、出会ったのがこの洋書。著者はワシントン大学の石丸先生で、電波研究所の研究者とも親交のある著名な研究者だった。論文もたくさん執筆され、惑星探査機からの電波が惑星大気によって影響を受け、その解析を通じて惑星大気の風を遠隔測定するという有名な論文を勉強したことがある。石丸先生は当時の電波研究所の先輩とも親交があったことから私も学会等で何度か親しくお話したこともあり、米国シアトルで国際会議があった時は先生の研究室に伺ったこともある。石丸先生は、誰にでも優しくわかりやすくていねいに解説をしてくれる、いかにもきさくな紳士という印象だった。そのお人柄がこれらの著作の文章から読み取れる。正直なところ、６００ページ、２２章からなるすべての内容について理解できたわけではないが、今までそして現在も勉強している、対流圏中の電波伝搬や陸地・大気の電波によるリモートセンシングの基本的な数学的・物理的なよりどころを折に触れてこれらの著作に頼っている。年数もたって日焼けも目立つ２冊だが、頼りになる著作である。
掲載日：2010/08/09