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No. 1 福地 一(航空宇宙システム工学)

レッドムーン・ショック : スプートニクと宇宙時代のはじまり外部リンク

著者:マシュー・ブレジンスキー著、野中香方子訳 出版社:日本放送出版協会 出版年:2009 ISBN:9784140813348

先生からの一言

著者は、「ウォール・ストリート・ジャーナル」モスクワ特派員やカーター大統領の特別補佐官を務めた米外交の専門家らしいが、よくここまで臨場感のあるドキュメンタリーを書けるのかと感心してしまった。

人類の宇宙開発を現実のものとしたイベントが1957年10月のソ連によるスプートニク打ち上げであることはよく知られているが、そこに至るまでの特にソ連内での権力闘争を織り交ぜたドラマが描かれている。第二次大戦後、ドイツのフォンブラウン達によるロケット技術・人材がそれぞれ米ソに移っていった。軍事的・科学的には、原子爆弾の実戦投入を果たした米国の優位を誰も疑わなかった時代に、ソ連は当時無名のコロリョフが首相フルシチョフの支援のもとで着々と軍事目的の宇宙開発を進めていた。大気圏再突入の技術が未完成なため、まず人工衛星の打ち上げをもって世界にソ連の軍事的優位を示すという意図は見事に成功し、タイトルにあるレッドムーン・ショック、あるいはスプートニクショックを特に米国に与えた。その結果、米国には、アメリカ航空宇宙局(NASA)や高等研究計画局(DARPA)が設立され、ソ連への対抗措置を強化することとなった。このDARPAの支援のもとでインターネット技術が確立されてきたことはよく知られている。この本は、米国がそれまで敵国のエンジニアとして軽んじてきたフォンブラウンの協力を得て、米国が1958年1月に人工衛星エクスプローラの打ち上げ成功を果たすところで終わっている。

人類の宇宙開発の重要なエポックとその周辺国際情勢についてご関心のあるかたにはお勧めの一冊です。縦書きで、通勤・通学のあいだに気軽に読める本です。

掲載日:2010/08/09

 
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